2009年02月18日

田んぼの生き物リストの完成から農業と環境の関係について考える

 子ども達と一緒に田んぼにいると、よく「いったい、田んぼには何種類ぐらいの生きものがいるの?」と聞かれます。しかし、信じられないかも知れませんが、実は今までその答えは分かりませんでした。
 なぜかというと、戦後の農業技術は生産効率一辺倒だったので、田んぼはお米をたくさん生産するための装置や工場のように認識されていました。だから、害虫はもちろん、お米の増産に無関係の生き物はむしろいないほうがよいという視点で生き物を見ていたのです。
 こんな状況ですから、お米の生産に関係のない生き物まで調べようなんて人はいなかったのです。だから、答えは分からなかったのです。

 しかし、農業の持つ多様な価値が見直されるようになり、田んぼの生き物を育む力にも関心が集まるようになりました。そこで、NPO農と自然の研究所が中心になって「田んぼの生きものは何種類?」に答えを出すため田んぼの生き物調査を各地で行い、ついに田んぼの生き物リストが完成したようです。

 さて、これからの農業を考えたとき、環境と調和した持続的な農業生産が求められるのはもちろんのことです。しかし、現状をみると、「環境にやさしい農業」や「環境保全型農業」などのあいまいな表現や、5年後には3割農薬削減にしますと宣言しただけの「エコファーマー」(つまり削減しなくても努力する姿勢だけでOK)、「減農薬栽培」、「有機農業」まで環境をキーワードにした農法、技術、農業政策が氾濫しています。

 でも、ほんとうに環境に良いの?
 いったいどちらのほうが環境保全効果が高いの?
 消費者はどれを支援したらいいの?
 と疑問を感じるのは当然のことです。

 そこで、効果を検証するのに、この生き物指標の完成ということが大きな意味を持つのです。
 生き物の多い田んぼと少ない田んぼではいったいどこがどう違うのか。とかく、農薬を減らす回数ばかりに目が行ってしましいますが、農薬を減らすのは手段であって、目的は環境を保全すること。その重要な指標の一つが生き物を豊かにすることだと思います。

 目的がはっきりすれば、生き物を増やす農法や技術を組み合わせればいいのです。または、その方向で技術開発すればいいのです。生産性の向上でなく、生き物の多様性の向上に支援していこうという流れになります。もし、生き物を豊かにするために生産量が減ったり、労力が新たにかかるのならその分を補填していく仕組みを考えるということも必要となるでしょう。

 特に、都市農業では、たとえば500kgの収量はあってもトンボもカエルもいない田んぼと、400kgしか取れなくても赤トンボが群れ、カエルが跳ねる田んぼではどちらの存在価値が高いのでしょうか?公的資金を(補助金、税の減免)を使ってまで保全したり振興したりするに値する都市農業とはいったいどんな農業なのでしょうか。

 従来の生産振興に偏った農業施策を続けて行くことが良いのか、現場で、農業者だけでなく、市民、行政、研究者を巻き込んで真剣に議論されることが望まれます。

 今後、農業と環境を語るとき、技術や農法、政策がいったいどのように貢献、効果を挙げているか比較検討するうえで一つの物差しが出来たという意味で、この生き物リストの完成は大きな意義を持つと思います。
posted by 農楽人 at 23:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | トピックス
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