2015年02月18日

東京都が都市農業特区の創設を提案

 新聞報道等によると、東京都が国家戦略特区の一環として、「都市農業特区」を提案するそうです。

 報道内容等からすると、内容は2つ。
 (1)農地は税制優遇が受けられる生産緑地の面積要件(500平方メートル)を緩和
 (2)生産緑地を貸し付ける場合にも相続税の納税が猶予されるよう規制緩和
 これらの「税制優遇によって農地の保全・流動化を進め、農業を振興する」というものです。また、「目的は、小規模な都市農地の保全や農地の流動化による担い手の確保、そして生産性の向上である。」そうです。

 
 知事が先頭に立って都市農業を振興する東京都の姿勢は評価できます。今までの都知事たちとは雲泥の差です。しかしながら、東京都のホームページには「都市農業特区」について何ら掲載されていないので、税制優遇が「農地の流動化による担い手の確保、生産性の向上」にどのように結びつくのかよくわかりません。

 確かに、生産緑地の面積要件を緩和すれば、小規模な農地に保全の途が開かれることになります。現在、生産緑地に指定されていない農地、いわゆる宅地化農地には2種類があり、農家が指定を受けたくても受けられなかった小規模農地と、売却予定などで農家が自ら指定を受けなかった農地とがあります。すると、要件が緩和された場合、この指定を受けたくても受けられなかった農地が新たに生産緑地指定される可能性はあります。

 しかし、はたしてどれほどが新たな指定を受けるでしょうか。なぜなら、現行の生産緑地制度は平成3年にスタートし、30年間営農することが条件なのです。もうすぐこの30年の期間が到来し、平成33年以降は生産緑地の売却、転用はいつでも可能となります。わざわざ今から30年間売却も転用もできない制度に自ら申請する農家がどのくらいいるでしょうか。
 制度的に面積要件を撤廃する意義はわかりますが、現実的に農地を保全する効果が増すかどうかははなはだ疑問です。東京都は特区申請するなら追加指定の見込みを具体的に示してほしいものです。

 もちろん、生産緑地の面積要件撤廃の効果はゼロではありませんから、是非進めて欲しいですが、私はむしろ、生産緑地と宅地化農地との中間的な制度の創出を提案します。
 それは、宅地化農地でも自治体と農家が農地保全協定を締結した場合、固定資産税を減免するという制度です。もし、これから10年間、農地として使用することを農家に約束してもらえれば、宅地化農地の減少をある程度食い止めることが可能となるでしょう。
 なぜなら、これから10年間で大都市圏でも高齢化、人口減少が進行し、空き家の増加、宅地需要の減退が想定されているからです。10年間農地転用を引き延ばすことができれば、その時には社会が大幅に変化し、今より一層、都市に農的な空間が求められていることでしょう。

 さて、今回の特区申請で最も不思議なことは、いったい東京都はどのような都市農業を目指しているのかさっぱりわからないということです。
 舛添氏の「東京は都市農業が盛んで色々な生産物があるが、農地を自由に使えるようにしないと規模の拡大はできない」や「目的は、小規模な都市農地の保全や農地の流動化による担い手の確保、そして生産性の向上である。」からは、効率的に農産物を生産する場としての農地という認識しか読み取れません。私は、生産性や収益性など経済の論理から都市農業が解き放されることで、都市の中でこそ実感できる農のめぐみや豊かさという新しい価値を見いだすことができると考えています。

 しかしながら、今回の特区提案の報道等からは、残念ながら、東京都が理想としている都市農業とはどういうものなのかという一番大切なメッセージが何も伝わってこないのです。

 世界一(舛添氏に好きなフレーズ)の農的な都市空間を東京で創造するために、今ある制度に不備があるから特区提案をします、というのが筋だと思います。東京都の政策担当者も当然そんなことはわかっていて、税制優遇さえできれば農地が保全され、農的都市になるという短絡的なことは考えていないでしょう。
 今後、東京都から都市農業特区の詳細が発表されるでしょうから、どんな世界一が出てくるのか楽しみにしています。

【2015年2月14日 日本経済新聞】
 東京都の舛添要一知事は13日、石破茂地方創生相と会談し、国家戦略特区の一環として「多摩地域を都市農業特区にしたい」と提案した。税制優遇によって農地の保全・流動化を進め、農業を振興する。舛添知事は会談後、記者団に「東京は都市農業が盛んで色々な生産物があるが、農地を自由に使えるようにしないと規模の拡大はできない」と述べた。
 現行の法令では500平方メートル未満の市街化区域の農地は税制優遇が受けられる生産緑地に指定できない。特区で面積要件を緩和できるよう要望する。
 生産緑地の相続税猶予も相続人自らが農業を営むことが条件となっているのを改め、土地を貸し付ける場合などにも適用するよう求める。
 今後、都は多摩地域の市町村と連携し、特区の実現を目指す。国、自治体、企業が特区の具体的な事業を話し合う区域会議で今年度中にも正式に提案する。
 都内では港区や千代田区など9区が特区にすでに指定済み。石破地方創生相は会談で「できれば東京全体を指定地域として、東京全体が発展するような役割を果たして頂きたい」と述べた。


【舛添都知事日記 2015年2月17日 現代ビジネス 抜粋】
 2月13日(金)には、石破大臣と会談し、地方創生と国家戦略特区について議論した。「国と地方」という図式で見れば、東京も一つの地方であり、国とは立場が異なる面があるのは当然である。
 一部の論者は、強い東京のせいで地方が弱体化しているかのように言うが、それは間違っており、東京も地方も、ともにWin-Winの関係で競争的共存を図るべきである。東京は、世界を舞台に熾烈な都市間競争を戦っており、首都として日本国を牽引していかなければならない。そのような中で、たとえば税制上の優遇措置で人口を東京から地方へ移すという施策が有効であるかどうか、疑問である。
 石破大臣には、以上のような主張を、率直に展開した。大臣もまた、「高齢者になる前に地方に移住し、新しいコミュニティを創る」という斬新な発想を述べてくれた。
 国家戦略特区については、東京都は、当初の9区に加えて、12区が特区提案を済ませている。それに加えて、多摩地域や区部を「都市農業特区」にして、東京の農業振興を図りたいという提案をした。目的は、小規模な都市農地の保全や農地の流動化による担い手の確保、そして生産性の向上である。都内の農地の6割は市街化区域内にあるが、そのため500平方メートル未満の農地は生産緑地と認められていない。
 そこで、宅地並みに課税されることになってしまう。また、生産緑地は相続人が農業を続ければ相続税が猶予されるが、他人に貸すと課税対象となる。そこで、農地が売られてしまうのである。これらの問題に対処するために、特区では、500平方メートル未満でも生産緑地と認定されるようにしたいし、生産緑地を他人の農業従事者に貸しても相続税猶予が可能なようにしたい。このような規制緩和によって、東京の都市農業を活性化し、担い手を増やしていくことが可能となると考えている。
 この都市農業特区については、次期の区域会議で提案したいので、石破大臣にはその旨を伝え、日程調整がつき次第、開催することの同意を得た。東京都と国が、協力して良い政策を推進すれば、それは都民のみならず、国民全体を裨益することになる。塩崎大臣にしろ、石破大臣にしろ、国政の場で培ってきた友人関係が、国と都の調整に役に立っているのは嬉しいかぎりである。

posted by 農楽人 at 20:50 | Comment(3) | TrackBack(0) | トピックス
この記事へのコメント
生産緑地と宅地化農地の中間的な制度を作るという考え方は卓見だと思います。賛成です。

個人的には舛添都知事の就任以来の多摩重視、農業重視の政策はありがたいと思っておりました。就任1年でたしか3回多摩の農業を視察されています。猪瀬都政ではゼロでしたので、そういう意味では舛添さんの姿勢は賛同しますが、今回の特区構想はいただけませんね。現場から積み上げた意見ではない、政治家の思いつきのような政策は、役に立ちません。



Posted by 中村利行 at 2015年02月25日 23:32
 コメントありがとうございます。
 都市農業をめぐる問題は、都市計画、農地制度、税制とが複雑に絡み合っていると感じています。このため、対策によっては、ある問題に効果はあっても、副作用も生じてしまう、ということも起こり得ります。
 中村さんのおっしゃるとおり、現場で実際に起こっている問題を丹念に分析したうえで、ち密な制度設計が必要だと、私も思います。
Posted by 駅前農楽 at 2015年03月04日 20:22
元々は、武蔵野の雑木林で、畑ではありません。
何もしない、とれない畑はでは、春は埃が立って、住民はたいへん迷惑しています。
Posted by ? at 2015年03月23日 18:31
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